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言わない言えない聞かせられないでも本当だよ
聞かれて答えに詰まった
けれど詰まったのは本当に一瞬だけ
場に沿う、正しい答えを口にした
いつもしているように、そっと微笑んで

「いいえ、そんなことはないです。もう平気ですよ。」

彼女はそれでは納得せずに質問を重ねる
だから私は一度息を吸いそして続けた

「新しい恋ですか?全然ですね。もう良いと解っているものにしか手を出したくなくて」

哀れむような慈しむような視線だ
実の母ほどの年齢の彼女は、私を常から慈しんでくれている
その彼女の優しさは何を確かめれば安心するのだろうか
すうと細められた目はようやく私から外され
自分の答えが正解だったと安堵する

テーブルに載った色あざやかなサラダ
過去はこんなに鮮やかにとはいかない
今、ここにあるものだから、こんなにも色が鮮明なのだ

何を確かめたいのだろうか
何を知りたいのだろうか
私が彼をまだ好きだと言うと、彼女はどんな顔をするのだろう

まだ好き。好きだ。
彼に自分の死ぬまでの全てを預けると
彼を自分の全てで守ると、強く決意して返事をした
それが踏みにじられてぼろぼろになっても
それを踏みにじったのが彼自身でも
私の気持ちまで消えてなくなる訳ではない
彼との全てが全て塗りつぶされた訳ではない
ぽつんと置き去りにされたのだ
続いていた歴史が分断され抜け落ちた
それは美しかった過去で、切り取られた写真の様で
慈しむべき愛おしい過去なのだ
彼と交わることがなくても
いや交わることが無いからこそ
より一層その愛おしさは増す
彼自身の美しさもそうだ
彼の体は実に美しかった
私の触れた男の中で最も美しかった
細くどこまでも細いその四肢にはしっとりと筋肉がつき
荒々しささえ感じる隆起に覆われていた
陰影のとけ込んだなだらかな肌
間接はまるくつるりとして白く透けていた
特に腹が背中が美しかった
ダナイードのような神々しさが合った
彼は私が唯一、その肌に直に触れたいという欲求を感じた男だった
触れられることにも嫌悪が少なく
ああこれが真実の愛なのだと陶酔したものだ
いつか丸め込んで型を取りたいと、
いいやこの欲求は彼に触れられない決断をしてからのものだ
とにかく彼の体は美しかった
それもまた、失った今だからこそ、より美しさを増すのかもしれない

そんなこと誰にも言わない
言う必要が無い
もう忘れました、平気です、酷い男でした
そう口にするだけで良い
皆安心して、よかった、と私に微笑む
よかった、よかった、と繰り返しにこにこと笑う顔が沢山
ねえ忘れたら何かいいことがあるの?
彼との間に横たわる多くの事実が、暖かい事実が、冷たい事実が
消えてなくなる訳ではないのに
それは過去本当に起こった現実で、無かったことになんてできやしないのに
忘れたら何がどういいというの?
ただ唯一だと思った、確信した、盲目的に信じていた
それはあっさり捨ててしまえるほど薄っぺらくはない
一生私についてまわるくらい深くて重い
それほどの決意だった
その決意にそえなかった自分を責める気持ちすらある
何だろうと受け止めてやると、彼を守ると、誓ったのに
彼に踏みにじられたことでくじけた、逃げ出した自分を根性なしと思うこともあった
ぼろぼろになるまで私を糾弾し罵倒した彼は
何の決意を持ってあの日私に永遠を誓ったのだろうか
何が理由でその永遠を踏みにじろうと思ったのだろうか
その謎は永遠に解けない
彼の不安も怒りも暴力も何もかも、理解できないまま
それこそ永遠になる
私と彼の間に横たわる永遠はそれだけだ
生涯変わることの無い永遠、永久の事実

いくら鮮烈な痛みでも、いずれ傷は癒える
覚えていたいと切に願っても、少しずつ人は忘れてしまういきものだから
あれらのことは、所詮
少しずつ褪せて薄れて行く過去のひとつ
それを美しいままでと望むのは、ただの自己愛かもしれない
彼を愛したことを正当化したいだけかもしれない
それでも、やはり、私にっとて愛おしい過去であることも
また大切な事実なのだ

そんな綺麗事
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