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部屋で水没
立体


足りない、足りない、足りない

ぐるぐる渦巻いく熱は耐え切れない程で、俺はのどをのけ反らせた
その曝された首に、犬みたいに鼻先をつっこんできた男は、そのまま体重で俺の肩を押さえ込んで、首をなめあげた

「ひ、……ぁ」

首が特に弱い性質を、こいつは毎回毎回、ふふふと笑いながら弄ぶ
かわいいかわいいねと囁きながら、べろべろ俺の首を舐める
あまいあまいあまったるい空間を作り出して、それに満足そうに笑う
それが腹立たしい
俺が好きなのは、征服者の高笑いなんだよこのばか!

とか俺が考えているあいだもお前は、もちろん指を動かすことも止めてくれなくて、じんじん下半身が燃えるように熱い
でも決定打に欠ける
高みにいけない

わかるか犬、これじゃ高みにはいけないんだよ

「いきそう?」

犬が自信なさそうに聞いてくるから、首を横に振った
俺がいかないことを気にするなら、俺が気持ち良くなることにいい加減気が付いてくれ
力で捩じ伏せてくれたらそれでいいんだ

足りない
でも熱い
足りない足りない足りない

「つらい?」

「大、丈夫だからっ」

つかまっていいよ、犬が自分の背中に回させた手に力を込めて、犬の背中を力の限り締め上げる
犬の手は止まらなくて、熱くて熱くて呼吸が苦しい

でもまだ足りない、足りないよ

違うそうじゃないと、叫べたらいいのに
俺の高い高いプライドがそれを許すはずはなく
もっと、と可愛く掠れた声でお願いするのは
なんかこれから先の俺たちの関係に支障をきたしてしまいそうで

俺は背中に回した手に在らん限りの力を込めて抱き寄せることで、伝わりやしないかと
何で伝わらねぇんだこのカス!と心のなかでリンチを決行し
怒りを言い訳にして、犬を精一杯抱きしめた
間がなくなって、繋がってしまいたいんだ

「痛いほうがいい」

秒針の音もしない、ふたりのためだけの空間で
荒い呼吸の合間に、首筋にしがみつきながら、零れた
囁くような俺の願いは、お前に届いただろうか




そして今日も物足りない
| くらげ | ふたつめ。みっつめ | comments(0) | - |
ママレモン
立体



欲しい痛みじゃないことが不服だった


癇癪が爆発して、俺はたまらず叫んだ
力一杯、頬を張った右手がじんじんと熱い

「ばかじゃねぇの!」

つっけんどんな言い方でお前と距離を取って
分厚い胸板を見ながら、うんざりとため息をつく

ちりちり水ぶくれ手前の火傷が指先から腕へ、腕から胸へと広がる
決定打に欠ける弱い、けれど神経にさわる痛み

「ひどい言い様ですな」

ちがう

ちがう

そんな仕方ないな、けど腹立たしくて仕方ないな、なんていう態度はいらない
怒りをあらわにして欲しい

俺を打ちのめして欲しい

「使えねぇお前に発言の権利はねぇよ」

言い捨てて鼻で笑ってやる

さあ怒れ

怒鳴れ

殴って詰って

俺を傷付けて

「何がしたいんだね君は」

怒りでこめかみがひくひくして、声が唸ってるみたいにくぐもっているのに
まだ感情を押し殺すお前に、俺は押し潰されそうになる

「うるさい」

「ちょっと」

「うるさい」

「聞きなさいって!」

大きな声をあげたお前が、俺の手首を捕まえた
反射的に振り払おうとするのに、それは許してもらえず
いっそ痛いくらいに力を込められる

「何がしたいの」

呆れて、疲れて、お前がつくため息が、俺の喉を酷く熱くする
何で傷付けくれないの、と喉の奥で叫びが渦巻いて
たまらなくて唇を噛み締めた

大きな手は俺を決して傷付けない

強く、強く掴むだけ

それがたまらない


なあ俺は不安で不安でたまらない

いっそ傷付けて欲しい

「大丈夫だから。ここにいるから」

息が苦しいくらいの力で捕まえられてるのに、不安だなんて言うと、罰が当たるのだろうか
| くらげ | ふたつめ。みっつめ | comments(0) | - |
撃鉄の鐘
復活・右腕と十代目 (引き金 追記)

俺が彼を駆り立てた
未来へと戦地へと、俺の望む先へと

彼に選択してほしいと願った
そして俺に右腕という価値を与えてほしいと

だから今更、と解っている

「十代目」

彼は。十代目は。もう、

一体いつこうなってしまったんだろうか。何が過度だった?何が足らなかった?
沢田綱吉を愛していた。
十代目として、ボスとして、友人として、

けれどいつの間にか沢田綱吉は居なくなった
残ったのは十代目
俺が望んでやまなかった完璧なるマフィアの王

最も愛する存在
敬愛し、全てを捧げるボス

「十代目」

俺の全て

愛するひと

「何」

彼が、掌にまとわりつく血を綺麗にアイロンのかかったハンカチで拭っている。
俺がクリーニング店もびっくりのアイロン技で一昨日の夜、皺をのばし
彼の好むコロンの香りを一晩かけて染み込ませた。

低くゆっくり、呼びかけに答え、目線をちらりと俺によこす。
俺の望んだまま、願うままの姿を、所作を、言動を、

妻を、

彼は身に纏う。
頭脳、戦略、部下の扱い方、配慮、全てが非の打ち所のない完璧なひと。

「十代目」

俺の愛する人はここに変わらず在る。
ずっと、ずっと俺の目の前に、手の届くところに在る。

なのに何故だか、沢田綱吉が恋しい。

貴方には決して言えない。
貴方は完璧で、俺の望むままで、何も間違ってはいないはずだ。
これが正しい。最善だ。

貴方を愛している。

ただどうしようもなく悲しいのです。
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引き金
復活 十代目と右腕


正しいを選択することが正しい
だから正しいを選択し続けた

たくさんのシナプスは無数の可能性を開拓し続けると同時に、無限のループに陥っている
抜け出すことのない不毛な繰り返しは、結果の明白な挑戦に似ていた。
それは時に賢明で、時にどうしようもない愚かさを持つ。

今回はさあどっちだろうか



「十代目」

またか、と思った。

哀れだと思う優しさも、どうにかしたいという同情も、いい加減にしろという怒りも、いっそ悲しみすら覚える痛みも、今はもう薄れてしまった。

「十代目」

彼は。右腕は。もう、

きっかけは何だったのだろうか。始まりはいつだったのだろうか。気付いていれば、何か違ったのだろうか。
全ては憶測で、過程で曖昧な妄想。それは好まない。右腕が愛する十代目は、それを好まない。

「何」

掌にまとわりつく血を綺麗にアイロンのかかったハンカチで拭う。
低くゆっくり、彼の呼びかけに答え、目線をちらりと彼によこす。彼の望むまま、願うままの姿を、所作を、言動を、

妻を、

俺は身に纏う。いいや、俺自信なんて残っちゃいないのだ。ただ正しく遂行するイレモノがここに在るだけ。

コートからむせ返る鉄臭さも慣れたものだ。ただいやに重いのは不快だった。
数え切れないひとを殺した。子供も女も老人も仲間も。罪の意識も。

「十代目」

彼が望んだ。願った。
だから選択し続けた。
だから棄てつづけた。
正しいを選択し続けた。

なのに何故、彼の目には悲しみが揺らいでいるのだろうか。
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正しいの行き場所

復活・ザン山


もやもやする気持ちは一日中消えなくて
ぐるぐる俺の中で渦巻いていた
元々勉強が大の苦手の俺は、考えることが苦手で
打開策とか、解決法とか、これから、とかなんにも考えがまとまらなくて
かといってもやもやを払拭することもできなくて
ぼんやり天井を見上げていた

謝ってきたのは向こうだった
謝られたから、飲み込もうと思っていた気持ちが溢れ出して
途中で強張ったあんたの頬に気が付いても
堰き止めることができないまま
涙が出そうになるくらい高ぶった感情を、一気に吐き出して

それから一言付け足した

「でも謝ってもらうことではないと思う。これは俺の意見だから」

ああ?とガラの悪い声。
でもこの台詞は事実だった
謝ってほしいわけじゃなかった
ただ知ってほしかった
それから、もし可能なら、すこし、すこしでいいから変わってほしかった

あんたは不機嫌な空気垂れ流しのまま黙り込んだ
それから気まずい沈黙が何分も、何十分も流れ
とうとう耐えきれなくなった俺はあんたに話しかけた

「しゃべりたくないのか?なんか考えているのか?」

「それをお前に言わねぇといけねぇのか」

予想通り壮絶不機嫌な低い声
そのまままた黙り込んじまったあんたに、俺はどうしていいか解らずに
また口を開いた。

……俺に用あるの?」

「ない」

「じゃあ何でいるの」

ない、という答えが予想外で、思わず言い返したら
言い終わるないなや、あんたは上着片手に黙って車を降りた
思いっきり渾身の力で運転席のドアを閉めて
これ、あんたの車なんてもちろん言う暇もなかった

それが昨日の夜



あんたから謝ってきたんじゃなかったのかよ

はじめは怒ってなかったということは
何かかがあんたの逆鱗に触れたわけで
間違いなく俺の台詞の何か、もしくは全部だろうけれど

「ああもうわけわかんねぇ」

顔をうずめた布団は干したてていい匂いなのに、俺の気分は超ブルー

だって悲しかったのだ
二人で決めて出掛けたはずなのに(少なくとも俺はそう思っていた)
俺は関係ない、お前が勝手に決めたことだ、知らん、なんて言い放つから
そんな仕方なしに、嫌々付き合ってやってるなんていうスタンスなら
そんなの最初っから出掛けないほうがずっとずっといいと思った

それは、前々から何となく引っかかっていた物言いだった
いつもの俺なら、付き合ってくれてありがとな、と笑えたはずなのに
昨日は何だか、飲み込みきれなくて
しかもザンザスが謝ったりなんかするから、言ってしまった
(今考えると、俺が隠しきれてないから、宥めるための戯言としてだったんだろうか)
先週も?先々月の水曜日も?今までずっと?
俺の一方的な我儘に振り回されていると感じていたのだろうか
迷惑だと、煩わしいと思っていたのだろうか
そう考えると悲しくて悲しくて、苦しくて、やるせなかった

だって、あんたを楽しませたいと思う俺の気持ちの行き場がない
あんたに不快な思いをしてほしくないという気持ちの行き場がない

「やだなあ。これって喧嘩になんのかなあ」

喧嘩はきらいだ
何が誰が悪いかもやもやしていて解らないけれど、問題が収まるなら
俺が歩み寄ればいいと思う
美味しい稲荷寿司でも作って、挨拶に行こう
あんたは日本食に目がないから、きっと機嫌も良くなる

「よーし。油揚げ煮つけるぞー」

キッチンに一目散。腕まくりをして冷蔵庫から油揚げを取り出した。
それから鍋の準備。
稲荷寿司は俺の超得意料理だから、絶対うまい
どうせ作るんなら、ツナたちと、あとルッスたちにもあげたいな
これを持って、ザンザスの執務室に行こう
またいつもみたいに元気にあいさつして、それから昨日はなんかごめんなって謝って、

それから今度から謝られたって、理由を言っちゃいけないんだな
感情を吐露するのはやっばりだめなことなんだ
たとえザンザスにだって、それをするのは正しくない
そしたらあんたが怒らないで済む
それだけのこと

それから俺は付き合ってもらっているという立場を弁えないといけない
今度から、自覚して行動したら
もうあの物言いに何かを思うこともないだろう
それだけのこと

うん。大丈夫。できるできる。
それさえ守ればこれからもザンザスと今までみたいに、

昆布を棚から出して、そこで俺の手は止まった




でも思うんだ
だったら一緒にいることに意味はあるのかって

これからは必要なのかって

 

 

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質量爆発により避難警告
最近つんでれがヤバい

意地っ張り受けがヤバい

純情ロマンチカがヤバい

純情ロマンチカのアニメがヤバい

どのくらいヤバいって

声はかろうじて出さず息で全力で叫ぶくらい
ぶるぶるする拳でベッドたたくくらい

正直ひとりで悶え半死に

つんでれヤバい

何だこれ世紀の大発見だなをい

ていうか何で突然つんでれの魅力に気が付いたかは謎だが

今までふーんまあいいとは思いますよ的さらっと具合だったのに

アニメを見ながら

ああいいヤバいなんだこれくそやってみてえたのしそうだなおいいやあにめをみてるだけでだいぶお腹いっぱいだしやりたいかといわれると少し疑問だが

もっと疑問なのは

受けをやりたいか攻めをやりたいか

全く判断ができないところだ

あたしまじでエムとエスの全面大戦争だ
ひとりエスエムエレクトロニクスハイだ
二重人格はこうして生まれたりするのか
だとしたらちょっとけっこうシリアスな問題だぞ

美咲を丸め込んで虐げるのは楽しそうだが
秋彦的台詞攻撃にはかなり弱い大好きだ
宏樹の可愛さは犯罪を通り越して萌罪
野分の敬語かつ腹黒チラリズムはおいしい
宮城のたじたじは傍観でいい満腹
忍のツンに見せかけてキレながら全部デレるは高度テクニックだよな

この勢いを最早ひとりでは消化できない

びーえるゲームがやりたくなる
いや未だかつてしたことがないのだが
何でってそりゃゲーム機がリビングだからだ
親のまえで悶える趣味はない

トガイヌがやりてぇ

ほわほわ系が薬でキチク行き過ぎて狂気て
意地っ張り主人公たじたじて
狂気がもはやがっつり犯罪血まみれて
楽しすぎるだろその設定こら

最近なかなかツボが見つからず
バサラからハルヒからワンピースからブリーチからトガイヌからナルトからミナミケから立体から
と女萌え男萌えぺたんこ立体入れ食いバイキングでしたが

バサラは鬼の兄貴にかなり惚れて
非公開ではばりばり文字を書いたんですが
相手の竜の旦那がエセい英語まじり口調なんで
人様が書いた文字はふんふん読めるのに
自分のエセ英語は恥ずかしいんだこれがまた!

立体もかなりきて、ばりばり書いたが
おいそれとオープンにできるわけないし
パスワードとかなんとか面倒臭いことは嫌いだ

ハルヒは創作から入ったせいで原作がほとんど解らない
証拠に創作のキャラを原作キャラだと思っていることが先日発覚
あたし会長がかなりツボで会長とキョンがツボだったんだが
会長が原作にあんま出てない?よく解らないがそういうこと?らしい
とにかくハルヒが苦手で原作は無理
てなるとこれまたオープンにするのが躊躇われ

で、もやもやもやもやもやして、ああなにかないのかないのかと徘徊

文字からアニメに飛び出してみたら
あっさりどひっと
人間がいかに視覚情報に支配されているかを知るな
文字もいい
だか動くのもいい
今更だが気づく
アニメの魅力に今まで気づいていませんでした
今までアニメとか殆ど見ていなかったものですから
ゆちゅぶんさまでどっぷり

というかどこまで固有名詞出していいんだ
題名とか人名とかいいのいいのかいいよなフィクションだもの
突然こんな勢いのこんな話題で
もしかして誰かに引かれたりする?
それはちょっと不本意だぞーかなしいなあ
なんていう疑問がないわけではない

ない、が

そんなことよりヲタク迸って自己制御できません

何年か分が爆発したかんじか
超新星だな
中の質量に耐えかねて爆発どかーんだ

文字にしたら
少し落ち着いたような気がする
単に時間がたっただけのような気もする
ので寝ます頭がんがんするわ

おやすみ

おしまい




そういや星の質量爆発について新しい発見があったらしい
近々詳しく調べなくては
| くらげ | ふたつめ。みっつめ | comments(0) | - |
花火のあとの絵空事
2009081320160000.jpg
古キョン・ハルヒ

夏を燃やす
燃え殻ときらきら弾ける火薬
亡くしたものを羨んで
燃え尽きた花火が突っ込まれた
バケツの中をかき混ぜた
元気でいるのか
それだけでも知りたい

卒業して
ハルヒの神の力が失せて
そして奴は消えた

さようなら、なんて爽やかに笑って
ちょっと寂しいです、なんて俺に耳打ちした
嘘つきだ
寂しいならそんなに穏やかに笑えるものか

「またいつか会いましょうね」
連絡先も知らないのに?
だってその携帯、機関のものだろう
「そんな顔しないで下さい、ね、怒らないで」
あほか
泣きそうなんだよ馬鹿

穏やかに微笑んだまま
「それでは」
片手を上げて
「さようなら」
奴は去っていった

もう、四年も前のことだ
なのに
俺は相も変わらずビョーキだ
抜けないループ
ずるずる、引きずっている
あの時、言っていれば何か変わっただろうか
あの時、

「クリスマスのご予定は?」
「僕のところに寄っていきますか?」
「電話します」
「また会いたいです、こうして二人で」

その台詞の返しに、その時、何か、

ああうんざりだ
あそびたい
大切じゃないと言い切ってくれる
嘘の優しさをもった
そんなのが降ってくればいいのに

優しいのはいらない
だからお前はいらない

ビョーキの禁止事項を破ったせいで
副作用がひどい

ひどいのは俺
ひさんなのも俺

後悔していると認めたくないだけ
| くらげ | ふたつめ。みっつめ | comments(0) | - |
右手が在る意味
復活・獄と山・イタリア行前


離さなくちゃいけなくなるなら

温もりなんか知りたくはなかったんだ


「お前は野球でもやってりゃいいんだよ」

それが彼の優しさであることは解っていた。解っていたが、やはり辛い悲しい台詞だった。

「なんだよ俺も連れてってくれよ」

笑顔はぎりぎり取り繕えたけれど、声が僅かに震えてしまって、獄寺の眉間のしわがますます深くなる。
獄寺の、俺にはたまにしか見してくれない笑顔が見たいのに、いつも失敗する。
俺に向けられるのは、こういう不機嫌そうな鋭い目。まあそれはそれで恰好良くて好きなのだけれど。
でもツナに眩しいほど注がれるそれらを、一時だけでも自分に向けてはくれないかと、願ってしまう。

「うるせぇ黙れ野球馬鹿」

野球、馬鹿…ね。野球のところにいつもより、力が篭ってたのは気のせいなのかな。

「俺、も、連れてって」

置いてかないで、ほとんど掠れた言葉を、彼は唇の動きで読み取ったのか、緩く首を横に振った。
もう笑顔を取り繕う余裕もなかった。ほとんど泣きそうだった。瞬きをしたら溢れてしまいそう。

「ここに残れ」

そんな優しい声で笑顔で、彼は俺を置き去りにしようとする。

「やだ、やだよ、なんで」

なんでそんなこというのさ。いやだよ。
置いていくなら殺して行ってよ。お前のお得意のダイナマイトで骨までぶっ飛ばしてよ。
俺をひとりにしないで。

「さよなら、だ」

彼が切望するツナの右手の地位。
二人でそれを争った、争っていた、なあそれはまだ続いてる戦いだろ?
俺、獄寺に譲った覚えも負けた覚えもないもん、なあだから、行かないで。

「お前の右手は、野球のために在る」

俺が球を放る右手。
いつもはバットを握る右手に、剣を握った右手。ツナのために、ツナに尽くす獄寺のために。
そのことを忘れたなんて言わないよな、言わせない、言わないでくれ。
俺ちゃんと戦って役に立ったよな。だって勝ったもん俺ちゃんと勝ったもん。
今からだってこれからだって、握るよ剣を、必要だっていうなら、剣を奮うよ。
一緒にいるために生き抜くために置いていかれないために愛するために、守るために。

「俺、刀も握れるぜ」

無理矢理口角を上げて、冗談めかして懇願したのに、彼はあっさり、俺ごと切り捨てる。
見たことないような優しい笑みで声で、そっと俺の右手を撫でる熱が温かい。

「もう握らなくていいんだよ」

離れていくならお前の熱を知らなければ良かったなんて、恨み言を、言うひまくらい欲しかったのな


(置いていくなら、いっそ)
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ばかな子はイイヒト
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復活・ヒバ山ヒバ・リトル暗


「君を?」

安い質問だと思った
純粋で単純で真っ直ぐで夢見がちな男である君に相応しい
安い質問だと思った

「人間としては好きだけど男としては嫌いだよ」

僕はだいぶ冷めた頭で言葉を繋ぎ合わせれるようになり、前にも増して冷たい台詞を口にした
安易な恐怖心に隠れてたほんとうを、語れるようになってきたのだ

「だから質問の答えはNOだ」

ゆっくり言い切ると、僕は耳をすませた
ばかだなあほんとにかわいそうな子
君はよっぽど頭おかしいか、ドエムかだとけらけら笑ったら
泣いてくれるんじゃないかと思った
だから言ってやった
泣いてないかを知りたくて、耳をすました

どうやら僕は君に泣いてほしいみたい
どうやら僕は君を泣かせたいみたい

でも何でだか泣いたかどうかを、はっきり確かめることはできなかった

「君って地味にイイヒトだよね」

口をついて出た言葉を何回か繰り返した
皮肉なのか褒め言葉なのか僕自身が解らないまま
イイヒトだと何度か笑ってやった
かわいそうなばかな子は、そうか?なんて首を傾げてた

「わかんない子だね」

これは皮肉、完璧なる皮肉
君が僕をひとしきり褒めた後に優しく言ってあげた皮肉

君が口にする僕への言葉全てを槍に変えて突き返してやりたい
もし僕がそれらに心を暖かくしてると勘違いしてるのなら
君は僕が思う以上にもっと、ばかな子だ
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ほんとう
復活・綱→山・イタリア行き前


「ごめん、ごめんね」

時間はするする過ぎていくもので
何もないと勘違いしてしまうつかの間の日常に
浸かりそうな自分の甘さにうんざりする
いつの間にか冬が終わろうとすらしている
君に伝えられず口先で謝罪を繰り返した

「いつまでそうやってるんだ、だって」

人生の先輩のアドバイスは染み入る
染みすぎて塩を塗られたように痛む
先延ばし先延ばしで今に至った
もう嘘やごまかしの段階じゃない
ぬるま湯に浸したままではいられない

イタリアに、いく時間が迫っていた
俺が、イタリアにいく時間が
君が、イタリアにいくかもしれない時間が
君が、俺とさよならするかもしれない時間が、

タイムリミットはもう近い
解っているけれどできないこと
解っているからしないといけないこと
解っているのに解らないこと
俺のちいさい脳みそでは抱え切れない
傷付けてはいけない、と
重ねて金髪の男、ディーノは言った
そんなこと解っている解っているけれど
君を傷付けずには俺のほんとうは語れない
マフィアごっこのほんとう
俺のこれからのほんとう
君を傷付けたくはないのに
俺はほんとうを語らないと可笑しくなってしまいそうだ
限界だ
何となく君が自発的に解ってくれないかなんて
そんな神頼みの他人任せをしてた
君に自然に悟らせる、のは
俺にはできないことだった

ごめん
ほんとうを語ります
きっと君を傷付けるけれど
最後まで聞いてね
| くらげ | ふたつめ。みっつめ | comments(0) | - |