無料ブログ作成サービス JUGEM
征服間近・欲しがり俺
ハボロイ・ハボside


手はつないだ

酔った勢いと漆黒の夜であることに乗じて

抱擁もした

二人きりであることと春先の肌寒さを言い訳にして

それなのに闇を纏った男は、夜が空けるように霧散して擦り抜けていく
別れ際も、次の日も、なにもなかったですよ、ってあんまりにも普通通りだから
俺は感じた熱が夢だったんじゃないかと疑うくらいだ

彼の嘘はわざとらしく見え透いていて、嘘だと完全に見破れるのに
掴み所がない巧妙さで、場の雰囲気ごと塗り変えてしまう

キスはまだだ

腕の中に収まる彼の唇を塞いでしまいたい

キスをしても

彼は同じように、唇が離れた瞬間、キスを、なかったことにしてしまうのだろうか

彼を好き、というよりは、この気持ちは征服欲に近い
無防備に甘えてきて笑い、隣に座り、ふたりきりも慣れた状況になって
それなのにこちらが手をのばそうとすると、柔らかく柔らかく拒絶の刺を纏う
刺は俺の指先をじくじくと鈍い痛みで蝕む
誘い文句も口説き文句も、やんわりと押し流されて、笑い話にされてしまう

けれどそれは笑い話にすぎず、明確なはっきりとした拒絶や、嫌悪ではないから
俺はますます思いを募らせて、やめることが出来ない
やめなくていいってことだって良いように解釈してしまう
それどころか、彼が俺のそうした言葉や行動を待っているんじゃないかとすら思ってしまう
自惚れ?自意識過剰?それとも、俺はあんたを見抜いてる?

あんたをくれ

そう言ったことがある
安上がりな願いだな、と彼が答えたから
じゃあくれよ、ともう一度畳み掛けた

この酔いどれが

彼は笑った、嘘だって解るわざとらしい作り笑いで、笑い飛ばした
正気だ、本気だ、と繰り返しても、もうだめだった
会話はすり替えられて、俺の言葉は霧散して消えた

俺がこうして言葉にすると、彼は作り笑いの奥に、ちらりと苛立ちをちらつかせる
それは笑顔に隠れてほとんど見えないのだが
確かに漆黒の瞳のなかで、苛立ちと深い悲しみが、淡い期待と一緒に弾けるのに、気がついてしまった
気が付くと、作り笑いが涙を隠しているように思えて
彼の纏う刺が、怯えと恐怖と、淋しさの結晶に思えて
ますます暴きたくなった
作り笑いのしたの気持ちに触れて、寂しさを拭い去って
あんたの感じてる不安なんて、と笑い飛ばして、優しく抱いてやりたい
冗談なんかじゃないよ、いつか飽きたりなんかしないよ、本当の本気だから

彼を好き、というよりは、この気持ちは征服欲に近い

暴いて開いて、なかまで入って、熱を共有して


あんたが欲しいよ
| くらげ | 鋼色の歌 | comments(0) | - |
運命の酒 Prologue
ロイハボ・リトル暗


言葉が一番無力なのだと

愛しい人の笑顔で知った


運命の水は、死
酒は、神の慈愛

ならばこれは神の慈愛なる死ということになるのかね

頭が良すぎてイカれてる男は、テキーラがなみなみと注がれたグラスを一気に煽り語った
「翌日に響きますよ」
静かに窘めるハボックにちらりと視線を流すと、男はまた琥珀色の瓶に手をのばす
「…大佐」
いけません、ハボックは再び男をたしなめ、琥珀に伸ばされた男の手に、自分の手を重ねた
「私はこれくらいでは酔ったりしないよ」
男は漆黒の目を細めると、重ねられた手に指を深く絡め、引き寄せたハボックの耳元に薄い唇を寄せた
「知ってるだろう、なぁハボック」
いつもは冷たい手の平はアルコールで熱くなっていて、ハボックはその熱さに喉が締め付けられる苦しさを感じる。
マスタングは引き寄せたハボックを見つめ、ハボックはねっとりと舐めるように感じる視線に、体が汗ばむ。マスタングの意図をくむことはたやすく、しかし受け入れることはたやすくない。
「もう寝ましょう?」
ぎこちないながらも、やさしく笑みを取り繕ったが、それはマスタングには通じない。
「ハボック」
握られた手に力を込められ、ハボックは眉を寄せた。マスタングの黒曜石の瞳の奥では、彼の象徴である、火蜥蜴がちろちろ舌なめずりをしている。まただ、とハボックは泣きたい気持ちになった。
拒みきれない自分が悪いのだろうか、しかしマスタングに求められたなら、拒めない。もとよりマスタングに全てを捧げた身なのだから。しかし、とハボックは思う。しかし、これは彼への忠誠心で賄われるべき行為なのだろうか、と。
「いいだろう?」
それはもはや問い掛けの形をしているだけの、絶対だ。マスタングはハボックに拒むことを許さないし、ハボックもマスタングを拒むことを知らない、いや許されていない。
「なぁ夜は長いんだ」
火蜥蜴が舌を出す瞳のマスタングに、家へ誘われ、連れ込まれた時点で安易に想像できた展開だった。それでもハボックは、拒めない自らが、浅ましい期待を抱いているのだと、もしマスタングに思われていたら、そう考えるだけで気が遠くなる。
のばされた白い炎の手から逃れることはできない。たとえ視線だけでも、逃れることはできない。マスタングが望むのであれば、ハボックには拒めない。

火蜥蜴がちろちろ舌なめずりをしている。
| くらげ | 鋼色の歌 | comments(0) | - |
チョコレート
エドハボ

いつかあんたを攫うから、いつまでも俺の太陽でいてよ

「次はどこに行くんだ?」
ある意味目の毒である艶めかしい四肢を投げ出して、ベットに寝転がったまま、俺の恋人は猫なで声で問いかけてきた。朝日が透けて、色濃い金髪が宝石みたいに輝いている。
「南」
「暖かいんだろうなぁ」
「たぶんね」
昨日、彼が洗濯して、俺が干して、彼が畳んだ黒いタンクトップを着て、冷たいフローリングを爪先でなぞった。明日はもう発たなければならない、この馴染みも愛着も罪な程に深い、愛しい恋人の家。故郷の家さえも焼き払った俺に、帰りたい家ができる日が来るなんて思ってもいなかった。
「どのくらい暖かいのかな」
ベットがきしりと鳴いた。振り返ると彼が、身を起こして寝癖を適当に撫で付けていた。匂いたつように色っぽい彼が、俺と目が合うと、蕩ける優しい微笑みを浮かべる。少し気だるそうでいて健康的な彼は、俺の恋人であり、少尉の地位に値する軍人である。鍛え込まれて無駄の無い筋肉が、これほどに美しいのだと、俺は彼の裸体を腕で抱くたび、眉間が切なさで滲む。
「さあどうだろう」
俺は答えて、彼の朝日に晒された体に視線を走らせた。彼の鎖骨のところにまあるく歯型がついている。そういえば昨日噛んだな、と思い出して照れくさい気分になる。
「くっきり残ったな」
俺の視線に気が付いた彼が、鎖骨の歯型を指でなぞった。
「痛かった?」
「痛かった」
彼は、何度も何度も指でなぞる。それは優しい指使いで、俺は目が離せなくなってしまう。
「けど気持ちよかった。噛んでくれて嬉しかったよ、エド」
歯型から離れた指先は、まっすぐに俺に向かって差し出される。トリガーを引き、時には人を撃ち、殺め、ひたすらに焔の錬金術師を守る指。
「何で急に、あんなこと」
噛んでくれ、だなんて涙を流して真っ赤な唇で誘うもんだから、俺はあがらえずに彼の皮膚に歯を立ててしまった。痕はつけるなと、いつもは赤くなって怒るくせに、どうして昨日の夜に、突然あんなオネダリをしたのだろうか。
「言ったかって?」
「いつもは怒るくせにさ」
「解らない?」
彼は突然、真夜中のあの妖艶さを青い瞳に滲ませると、可愛らしく首を少しだけ傾げてみせた。俺に差し出された指先が、手招きをするのに従い、俺はいまだベットに座っている彼のもとに歩み寄った。彼の指が、俺を捕らえ、感覚のないオートメイルの方の手首を掴んだ。感覚のない筈のその冷たい手と足が、火傷をしたくらい熱く、痛いほど感覚が研ぎすまされる気がするのだ。
「解らない」
金色はいつもと変わらず宝石のように輝いていたけれど、彼の瞳はどこか寂しげで、物欲しそうで、それでいて憐れむような色を乗せていた。雄弁なはずの彼の瞳なのに、今、彼の瞳のその奥を俺は覗き込む事ができない。これはもどかしく、悲しく、ぞくぞくする瞳だ。
「まだまだ子供だな」
これは解る。子ども扱いされた上で、ちょっと馬鹿にしてる。
「子供じゃないよ」
「子供でないなら、俺の意図を解ってよ」
俺の恋人なら尚更さ、と呟くとともに彼は銀の手の平にキスをした。鋭利な熱さを感じて、俺は思わず少尉の手を振り払い、手を引いた。彼はちょっとだけ驚いたが、すぐに笑うと、エド、と唇だけで俺を呼んだ。背筋が、震えた。
「どうせ消えるのに」
ひくつな言い方をしてしまった。だって彼の肩に、俺が残した紅い歯型は、ここに戻ってきたときには絶対にない。跡形もなく消えてる。仕方の無いことだと理解していても、やっぱり悲しい。そういうとこは、彼が言うように子供かもしれない。物分りがよくなんてなれやしない。彼から離れるのは辛いし、連れて行けないのは苦しいし、彼の熱を忘れかけるのは痛いほどに悲しい。
「消えてもいい」
消えてもいい、だって?そんなわけがあるものか。彼はやっぱり大人だから、別離を理解できてしまうのだろうか。彼の手が、再び俺に向かって伸ばされ、またオートメイルの手を捕らえた。火傷をしたみたいな痛みに慣れることはない。ああそれとも慣れるほど彼とは触れ合っていないから?慣れるほどの長い期間をともにしていないから?鼻の奥が絞られるように痛い。
「消えてもいいんだよ」
「よくねぇよっ」
ほとんど泣きそうで、荒げた語尾が震えた。いくら舐めても、吸い付いても、再び抱くときには、すべてが消えた白いからだになっているのって、なんか腹立たしいんだ。そりゃしろくあるはずの彼の体に、赤が咲いていたら、それこそ本気に悲しくて、怒り狂ってしまうけれど。
「だって何度だってつけてくれるんだろう?」
意味が解るか、と少尉は続けた。
「エド」
彼が俺を呼ぶ、そのことが、それだけで、俺は泣きそうに嬉しいんだ。彼の鎖骨には、俺が噛みついた痕。俺の背中には、彼のつめがひっかいた十本の赤い糸。赤い紅い血の滲んだ、俺と彼が愛し合った印。境界線が無くなって、溶けあうほど、熱に溺れた記憶。
| くらげ | 鋼色の歌 | comments(0) | - |
飽和状態
エドハボ・リトルエロ・「大きく歪む」翌朝

ほんとたまんねぇ、俺は緩みっぱなしの頬を机についた手にのせて、愛しい愛しい少尉を見た。冬眠から覚めたみたいにゆっくりした動きで、少尉はそろそろ歩いてる。
「こっち見るなぼけ」
「なぁんでー」
「くそっ子供ぶりやがって、このマセガキ!」
でかい声が腰にひびいたのか、短く唸って、少尉は腰を押さえた。ていうかその腰痛の原因が俺ってだけで、ほんと幸せなんだよねー。加えていうと、声が掠れてるのも俺の所為だし、その傲慢な動きも、まだほんのり紅い目元も、白いうなじに咲く赤も、俺が昨日咲かしちゃったわけで…なんか俺、ほっぺたにやけすぎて痛い。
「だって子供だもーん」
「子供なら子供らしくしてろ!」
ほんと愉快でたまらない。笑い転げて、それから道行くすべてのひとに、言いふらして廻りたいくらい、愉快。え、何を言いふらすかって?そんなの少尉が俺のものになったってこと、昨日俺の下であんあんそりゃあもう可愛く鳴き続けてくれたこと、ああでも人に言うのは勿体無いなーもし聞いた誰かが少尉のそんな姿想像したら本気殺しちゃうかもしんねぇし。それにしたってほんと可愛かった。予想以上に熱い少尉のナカに、俺はもう無我夢中で自分をぶちこんだ。何度も何度も俺の名前だけを呼び続ける少尉のその滲んだ青は、やばいくらい綺麗で、気持ちよくて頭くらくらしながら、彼の体にたくさんの赤を咲かせた。
「ねー少尉―」
「なんだよ」
「俺さーすごい幸せなんだよね」
あ、うなじが赤くなった。金髪から覗く耳も赤くなってる。ほんとやばいよあんた、ねぇなんでそんなに可愛いの。ちょっと犯罪じゃない?こんないたいけな青少年めろめろにさせてさ、罪深いよ。もう俺あんたに溺れまくってる。ねぇだから責任とってよ。あ、いいよあんたは俺になされるがままになっとけばそれで良いよ。俺があんたを捕まえて息もさせないからさ。
「愛してるよ、少尉」
| くらげ | 鋼色の歌 | comments(0) | - |
大きく歪む
エドハボ・リトルエロ


俺には兄が居なかったから、初めてできた兄貴みたいですごい嬉しかった。でっかくて、そのきらきら光る金髪にふさわしい、太陽みたいに笑うひとだと、俺は、その細められた青い瞳に魅入ってしまったんだ

最初はただそれだけだったのに

今はあんたを押し倒してぐちゃくちゃに思うまま拓きたいだなんて、そんなことばかりを考えているよ

その厚めの唇は、俺に今にも吸い付いてくれと言わんばかりだし、筋肉がついているのに抱き心地のいい体だとか、特に細い腰の妖艶さはほんとヤバイ。残念ながら身長が低い俺は、少尉に抱きつくとちょうど腰の辺りになるわけで、この事実だけをとったら俺は最近身長が低いのも悪いもんじゃないとまで思ってる。この俺が、だ。それに透き通るみたいに青いその目が、涙がかると色を濃くするのかと思うとぶっちゃけそれだけでイけそうなくらい、ぞくぞくする。何たって思春期だからね、エロいことばっか考えちまう。まあ大抵の男は胸のでかい女の子なんだろうが、俺にとって一番飛びぬけて美味そうだったのが、あんただったっていうこと。
「ちょ、っとエド!」
ああほらそのちょっと上擦った焦る声もぞくぞくする。ハスキーで耳に心地良い声が俺の名前を呼ぶのが好きだ、もっと呼べば良いと思う。その唇が違う名前を形どると腹の底からぐつぐつする苛立ちを覚えるんだ。特にあのすかした三十路のおっさんの名前については、ほんと殺してやろうかってくらい腹が立つ。これを嫉妬っていうんだね、ねぇ少尉?
「んーなぁに?」
子供っぽく小首をかしげて、にっこり笑う。今さっき椅子に座ったあんたの膝に乗り上げて間髪入れずに了解もなくキスかましたことなんて、なーにも知りませんよっていう純粋な子供の仮面を被って。あんたは俺のこういう子供っぽい仕草にすごい弱いってこともう十分知ってるんだよ。正直子供扱いされるのは好きじゃないんだけど、あんたにされるのは何故か結構好きなんだよ。ていうかさ俺、あんたにされることになら何だって許せるし嬉しいし、これを恋っていうんじゃないのかなぁ、ねぇ少尉?
「な、なにって…」
美味しそうで、今すぐにも、もう一回といわず何度でも貪りつきたい唇が、多分、俺とあんたとの両方の唾液でべたべたになってて、それが光を反射して、てらてらいやらしく光ってて、俺はごくりと唾を飲み込んだ。もうたまんないよ少尉、正直もう我慢の限界。興奮しすぎてなんか頭痛までする俺ってかなりあんたにやられてると思うんだ。もう少し子供の顔であんたをうろたえさせて焦らせてみたいっていう願望もあるんだけど、もう我慢できないよ、ね、もういいよね。いやとは言わせないよ、あんたは俺のものにする。絶対に、何があっても、あんたを誰にも渡したりしない。ぶっちゃけ独占欲の塊になっちゃってるからね、俺、ほんと覚悟してよ。
「エド!おい、エ、」
頬を両手で挟んで、鼻先を寄せると、俺の大好きな綺麗な綺麗な青い目が、予想通り涙が滲んで少しだけ色を濃くしていた。もっと滲ませたらどうなるか考えただけで、俺ほんとに射精しちゃいそうなんだけど。できればそれはあんたの咥内に負けないくらい熱いであろうナカでしたい。それってちょっと急ぎすぎ?でもそんな腰にくるような顔とか声とかされたら、我慢できそうにないんだけど。というか我慢するつもりない。ごめんな、俺かなり本能に忠実なんだよね。くせになりそうな気持ち良い唇に吸い付いて、さっきは入れられなかった、というか入れる前に少尉に押し返されちゃったんだけど。だから今度は少尉の手首を押さえつけてから、舌をねじ込んだ。びっくりするくらい熱い中に、背筋がぞくぞくした。

ああもう俺はあんたに溺れてしまうよ。でも、多分さ、ほんとは最初から溺れてたんだ。
| くらげ | 鋼色の歌 | comments(0) | - |
空は快晴
エドハボエド


空は快晴、つまり空は青、突き抜けるような青
だからあんたに逢いたくてたまらない

「東も晴れてるかな」
「晴れてるさ」
ささいな情報をもとに北の外れまで来たけれど、いつもの如く、から振りで終わってしまった。滞在に使っていた、さびれた宿屋の気の良いおじいさんに別れの挨拶をして、アルと二人で駅に向かう。整備されてない砂利道の小石を蹴飛ばしながら、ふたり並んで、もうすぐに出発してしまう汽車に向かって、ほんの少し早足で。
「汽車、間に合うかな」
「間に合うだろ」
答えて、もう少し速度をあげた。
「少尉は元気かな」
「…元気なんじゃねぇの」
すこし、言葉につまる。アルが俺の下心、というか子供じみた願いを見透かしている気がして、目元があつくなった。本当ならもう一泊してゆっくり発っても良いところを、こうして急いで東に向かってる。
「僕ね、今日みたいな兄さん好きだな」
「今日みたいってなんだよ」
蹴飛ばした小石が左側の草むらに消えた。先にも後ろにも誰も居ない。アルと俺の足音と、オートメイルが擦れる音と、それからふたつの影。
「自分にすごく素直」
ああほら、やっぱりアルには何もかもお見通しなんだ。でもなんかそれがちょっと嬉しくもあった。
「うるせぇよ」
| くらげ | 鋼色の歌 | comments(0) | - |
悲しいんじゃないよ、ちょっと悔しいだけ
エドハボエド・アル視点


僕の空っぽの中身が、油が足りないみたいにきりきり軋みをあげた

僕だけ弾き出されてしまった、いいや彼ら二人以外は入ることのできない、その遮断された世界が、愛おしくも美しくそして僕をとても寂しい気持ちにさせる。
「エド、洗濯物干してきて」
兄さんは面倒くさそうに、けれど立ち上がると洗面所に姿を消し、両手に洗濯物を抱えてベランダへと出て行った。
「アル?どうかしたか?」
「兄さんて」
僕はそこで言葉がつまった。始めて見ることばかりが、今日は続いている気がする。むくれる顔も、不平を言う顔も、僕は世界で誰よりも見ていると思う。兄さんは僕と一番一緒にいるし気を許しているし、でもなんか違う。なんか違う。もっと子供っぽくて素直で、真っ直ぐに兄さんは少尉に甘える、そのことに僕の中身がきりきり軋みをあげる。
「エドが、なに?」
ほら少尉だって今までだって見たこともないような柔らかい笑顔で、兄さんの名前を、僕の名前を呼ぶんだ。
「なんだかすごく、素直だなって」
なんとか思っていたことを口にした。少尉になら僕は子供っぽいであろうことも、情けない弱みも素直に口にすることができる。兄さんもそうなのだと、と思っていた。けれどいざ目にしてみると、僕は微笑ましいだなんて思うまもなく、もやもやとした思いを募らせている。
「そうかな」
「そうです」
「まあアルの前じゃあお兄さんぶりたいんだろうな」
少尉はいつもみたいに、いつもよりも優しく微笑んで、ベランダのほうに目を向けた。そこでは兄さんが精一杯背伸びをして少尉のトレードマークといっても過言ではない真っ黒のティーシャツをハンガーにかけていた。
「あの洗濯棒さ」
くすくす喉に引っかかってるみたいに笑いながら、少尉は口元を押さえて肩を震わせた。僕にとってお兄さんのような存在である彼は、それはそれは楽しそうに笑ってた。
「エドが来たときは、ちょっと下げてるんだ」
僕はびっくりして少尉を見た。ベランダの方を見ていた少尉は、横目だけをちらりと僕に向けて、悪戯っぽく目を細めてウインクをした。それから秘密だぞ、と囁くように僕に言った。
「ぜったいエド怒るからさ」
そこまで言い切ると、少尉は背もたれに深くもたれて声をたてて笑い出した。
「少尉…」
僕は少尉のほうに身を乗り出して、声をかけようとした。ちょうどその時兄さんが洗濯物を干し終えて、部屋のなかに戻ってきた。ソファで大笑いしている少尉に目をとめてから、僕のほうを見て、どうしたんだ、と視線で問いかけてきた。僕は理由を口に出すわけにはいかないので、肩をすくめるしかなく、兄さんと一緒に肩を震わせている少尉を見た。
「少尉っなにが面白いんだよ」
頬を膨らませ、少尉に詰め寄った兄さんから、僕はすでに遮断されている気がして。ここに来た事を後悔する。兄さんはいつも少尉の家にこうして来ているけれど、僕はといえば、実は今日はじめて足を踏み入れた。何で来ていなかったのかという理由は特に無かったのだけれど、これからはできる。とてもじゃないけれど再び来たくない。少尉は兄のようで大好きだ。けれど、この家は、僕のためには開かれていないのだ。
少尉に嫉妬しているのか、兄さんに嫉妬しているのか、もうまったく解らない。ただ僕にも早く早く好きな人ができて、こんな風に優しく名前を呼び合いたいと、ただそう思った。
| くらげ | 鋼色の歌 | comments(0) | - |
うわぬりうわのせ
ロイハボ前提ハボ×女・狂


笑わないで下さい
本当はとても真面目なんです
あなたが心底ばかにした目で見下ろすので、曖昧に笑っていますが
とてもとても本気なんですよ

「さ、仕事しましょう」
いやな空気から逃げ出すために、明るい声を出して、床から重いこしを上げた。
そのまま振り返る事なく部屋を出る為にドアへと向かう。ドアノブをもつ手がじっとりと冷たく濡れ、やけに震えた
何かに対する痙攣。腹の底ではげしい心音がこだまする
無言の、けれどねっとりとした彼の視線を背中に受けながら、俺は退室を果たした
声が震えていなかったかという事がすごく気掛かりでのどへと気持ちの悪い手を添える
ともすれば折れそうな足を引きずり、廊下を歩く
彼の前に佇んでいたいのか、早く、離れたいのかすらよく解らずにふらふら床を踏み
暫く―といっても速度が遅いので大して離れてもいないが―歩くと、じくりじくりと腰が痛んだ
足を伝う彼の残骸に笑い出したい衝動にかられる
「――ばからし」
煙草をくわえる火をつけ長く細く煙を吸い込んだ
彼を守りたい、と思う
もちろん彼は強いし、俺なんかよりとてつもなく強いのだけれど、守りたいと
できることなら全てしたい、できないことでもやり抜きたい
あの背中を眺めるだけで死にたくなるから
「あー…女の子に癒されたい」
その時本当に調度よく通り掛かったボインの受付嬢が、俺の意図を汲み取ったのか
少しほんの少し照れたように笑うと、いつものように目配せをしてきた
不思議と、彼に抱かれるようになって、女にモテるようになった

ああまったく皮肉なもんだよなぁ焔の大佐殿

みっともなく喘ぐ女の胸をつよくわしづかみにしながら、自分もこんなに情けなく汚く喘いでいるのだろうか、と頭を抱えたくなる
「あん、少尉」
すがるように口づけられ、ゆるく応じる
豊かな胸が揺れ、長い髪までもが汗で濡れている
座る俺をまたぐように向かい合った女は、腰をふりただ喘ぐ
ひどく浅ましい姿だ
「なんで笑ってるの?」
「いいや」
女の尻に両手を添えて、ぐいと腰を押し付ければ、それでもう言葉は終わりだった
女はただあんあん俺の上で喘ぎ続ける
そうして内股を伝う彼の上を、柔らかな胸をもつ若い女が上塗りしていった
| くらげ | 鋼色の歌 | comments(0) | - |
柔らかな肉穴
ロイハボ・リトルエログロ


朱い空の下でにたりと笑うその悍ましさ故の美しさ
そう彼はまさにそんな人間
「はらんだらあたしの勝ちよ」
口元をてらてら光らせた女が恨めしそうに言った台詞が耳元に蘇った


そうだよ俺の腹の中には、子宮なんてゆう生命至上最高の武器は備えられてない
彼の遺伝子は溢れて掻き出して排水管に消えてゆくもので
いくらいくら腹に留めたくとも、俺は武器を持っていないから、どうしてもできない
狂いそうなくらい彼の子が欲しい、欲しい、ただそれだけ
孕みたい、彼の遺伝子を
今日どこかの女が彼を宿したら
俺はきっとその母親を殺す。腹を裂いて絶対に絶対に新しい命が産まれないように
ずたずたに肉のちいさな塊になるまで裂いて、裂いて、
「…俺おかしいよ」
煙草の匂いがしみついた掌で口元を覆った。
彼の遺伝子を孕みたい、そのためなら、何だってしてしまう。できる。
すっかり彼のためだけに作り替えられた穴が、どんなに彼を絞り上げても
子宮がないっていうだけで街角に立つ女にさえ負けるんだ


俺は狂おしいまでの願いを腹に宿して、あんたの遺伝子を飲み干すよ
| くらげ | 鋼色の歌 | comments(0) | - |
鳴り響く音よ
いつか届けばいい

彼の足元でうずくまる砂を

舞い上げるように

地深く届くといい
| くらげ | 鋼色の歌 | comments(0) | - |